インド「高度人材」を活用できない日本企業

執筆者:出井康博2009年1月号

 二〇〇九年一月二十九日、日本に「シリコンバレー」がやってくる。IT(情報技術)分野で成功を遂げた在米インド人たちが創設した世界最大の起業家支援組織「インダス起業家協会」(TiE)の日本支部が発足するのだ。 一九九二年にシリコンバレーで産声を上げたTiEは、世界に広がる印僑(海外在住インド人)ネットワークと連携して拡大してきた。現在では、米国のみならず欧州、アジアの十一カ国に五十二支部を構える。直接の資金提供こそしないが、様々な助言や人脈づくりによって、過去に数千社の起業をサポートしてきた。 なぜ、いまTiEは日本に進出してくるのか。その背景には、東京で小さなコンサルティング会社を営むインド人青年の存在がある。日本を選んだ「変わり者」 インドの商都ムンバイで同時テロが起きた翌日の〇八年十一月二十七日、サンジーヴ・スィンハ氏(三五)は東京・丸の内のオフィスで、携帯電話を手放せずにいた。在日インド人の友人や日本人の顧客たちから情報を求める電話が相次いだからだ。「インドでは最近、テロ事件が相次いでいます。しかし今回は私も驚きました。外国人がターゲットになったからです。短期的には、出張の取りやめなど日系企業にも影響はあるでしょう。でも、長期的に見ればインド経済が引き続き成長していくのは間違いない」

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