アメリカで増え続ける山火事の警告

執筆者:松尾理也2009年1月号

[ロサンゼルス発]燃えさかる炎の中でハリウッドスターの豪邸が焼け落ち、煙に覆われた空に真っ赤に染まった異様な太陽がかかる。いぶされるような異臭が街中に漂い、のどの痛みを訴える人も珍しくない。季節感に乏しいロサンゼルスで、山火事が秋の風物詩となりつつある。二〇〇八年も猛威をふるい、カリフォルニア州では十一月までに、前年の一・二倍にあたる五千八百平方キロが焼失。東京都が三つ消えた計算だ。 山火事の直接的な原因は落雷などによる自然発火やハンターの失火などまちまちだが、被害が広がる背景には、内陸で発生し、砂漠地帯を通ることで乾燥しながら温度を上げる季節風「サンタアナ」の存在がある。風速は毎秒三十メートル以上、時にはハリケーン並みの五十メートルにもなる。また、南カリフォルニア一帯にはヤシやユーカリなど油分を含んだ樹木が多く、いったん火事になるとその葉や実が「油爆弾」となって火が拡大する。 ただし、サンタアナも、油分を含んだ樹木も、昔からあった。にもかかわらず、近年、山火事は過去にない頻度で発生しているのだ。米政府の統計によると、一九六〇年以降、全米で発生件数の多かった年度上位十件のうち六件が二〇〇〇年以降に集中している。原因は何なのか。

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