森ビルが上海で二〇〇八年十月に開業したばかりの高層ビル「上海ワールドフィナンシャルセンター」(高さ四百九十二メートル)の隣で、大幅にそれを上回る高さのビル「上海タワー」(六百三十二メートル)の建設が十一月末に始まった。依然続く高層ビルの建設ラッシュに地元では「景気が悪化しているのに、オフィスビルばかり建てて入居する企業があるのだろうか」と疑問の声が出ている。 もっとも、上海タワーは上海の国有企業三社が出資して設立した会社が開発を手がける。いざとなれば、許認可を握る地元政府のバックアップが期待できる。「上海タワーの入居者が少なければ、隣にある森ビルに対抗するための優遇策をいくらでも打ち出す」という見方もある。 高層ビルが乱立するのは、上海の「浦東」と呼ばれる金融街。もともとは農村だったが一九九〇年ごろから急速に開発が進み、中国の改革・開放政策の象徴と称賛される地区になった。 森ビルの高層ビルは、一九九七年のアジア通貨危機の影響などで本格着工が見送られたこともあり、完成は当初の計画より大幅に遅れた。完成が近づいた〇七年夏にはビルの工事現場で火災が発生し、地元で大騒ぎとなった。 デザインも地元で論議を呼んだ。当初は高層部分のデザインを円形の吹き抜けにする計画だったが、「日本の国旗のようだ」と“非難”が集まり、最終的には、吹き抜け部分のデザインを長方形に変更した。完成後も「日本刀が地面に突き刺さっているように見える」という批判がネットで相次いだ。

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