ハンガリーが国際通貨基金(IMF)などの大型支援で当面の危機を脱した後も、中・東欧では金融危機の火種がくすぶる。サブプライムローン問題の直撃を受けた金融機関は少ないが、危機に脆弱な経済構造が浮き彫りになったからだ。 中・東欧の景気は、外国直接投資や高金利を目当てにしたマネーの流入、好調なユーロ圏への輸出などによって支えられてきた。だが、金融危機によってマネーが逆流した。 危機が深まる二〇〇八年の夏までは、人々は低金利のスイスフランやユーロ建てで住宅ローンを組んだ。三十五年ローンの金利がわずか四%前後。銀行は融資競争に走り、預貯金のない若者向けに「頭金不要」であるばかりか、家具などを買い揃えられるよう住宅価格より三割程度も多い額を融資していた。ところが外貨の流出で通貨が暴落。自国通貨建ての支払額はハネ上がり、人々の懐を直撃した。また、外貨の資金繰りが苦しくなった銀行は外貨建て融資を縮小し、高金利の自国通貨建て預金の獲得へと戦略を転換した。雇用調整の本格化と重なり、内需を支える個人消費が減退するのは避けられない。 危機への耐性を示す経常収支を見ると、実はハンガリーの経常赤字は中・東欧では少ないほう。経常赤字が国内総生産比で二ケタに達するラトビア、エストニアのバルト諸国と〇七年に欧州連合(EU)に加盟したルーマニアとブルガリアは金融危機の予備軍として名が挙がる。先進国マネーの流出が続けば、官民の必要資金を外貨準備で融通することが困難になり、たちまち深刻な経済危機に陥るだろう。

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