ビッグ・スリーを助ける妙案はある?

執筆者:徳岡孝夫2009年1月号

 新聞に出てたちまち全米に知られ、日本にも届いたセリフがある。ビッグ・スリー(三大自動車メーカー)は新車がさっぱり売れず、またトヨタ、ホンダその他の外国勢に追い上げられて苦境にある。三社の首脳がガン首そろえて連邦議会の公聴会に出て、円に換算すれば兆で数える巨額の緊急支援をお願いした。そのとき下院議員ゲーリー・アッカーマン(民主党)が吐いた名文句である。「経営合理化を約束させられている企業のトップが、ワシントン空港に着陸した専用ジェット機から物乞いそっくりに錫のマグカップを手に降りてくる光景には、甘美な皮肉があった。救貧スープを待つ行列の中に、シルクハットにタキシードを着た紳士を見たときのようだった」 このセリフには、麻生首相の軽口とは違い、アメリカ各地から千に近い賛成の反応があったという。三人の中でも、とくにGMのリック・ワゴナーCEOを指しているらしい。マグカップの中身はジンまたはウォッカにトニックか? 大企業トップの非常識な高給や贅沢は何度も話題になってきたが、今度ほど批判的に取り上げられたのは珍しい。おおらかなアメリカ人も金融危機で金回りが悪くなると、他人の財布に口出ししたくなるようだ。批判を受けたGMは、役員用ジェット機五機のうち二機を処分し、二度目の陳情は車で行った。

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