「地球温暖化は嘘」という大嘘の不毛

執筆者:トマス・ラブジョイ2009年2月号

「温暖化」の立証が科学的な難題であることは確かだ。しかし、いま、あまりにも非科学的な言説が罷り通っている。[ワシントン発]先のアメリカ大統領選挙で共和党の副大統領候補となったサラ・ペイリン・アラスカ州知事は選挙戦のさなか、「温暖化の事実は認めるが、人為的なものではない」と発言した。「急激な気候変化が人為的な温室効果ガス排出によるものであることは、科学的に疑う余地がない」とするIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告から一年もたっていない時のことだった。足元のアラスカ州では、現に氷河が溶けつづけているというのに、科学的データを無視して、いったいどのような対策を講じられるというのか? また、『ジュラシックパーク』など数多くの科学小説で知られるベストセラー作家、故マイケル・クライトンは、遺作『恐怖の存在』に、従来の小説手法から離れて「地球温暖化は事実といえるかどうか怪しい」との批判を展開する一節を挿入した。私はそれを一作家の書いた「物語」と認識しているが、米議会は科学者不在のまま公聴会を開き、存命中のクライトン氏に持論を発表する機会を与えた。 これらの例は、現在のアメリカにおける科学教育、および科学リテラシー(科学的読解力)のレベルを物語っている。

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