金融危機を“言い訳”に使いたい者たちもいる。さだめし東京証券取引所あたりはその筆頭だろう。 というのも、東証が開設に向け準備を進めてきた「プロ(機関投資家)向け市場」が暗礁に乗り上げているからだ。新市場開設の狙いは、参加者をリスクの取れるプロに限って市場を活性化し、国内の機関投資家を育成して「外国人投資家頼みのいびつな日本市場」(東証の斉藤惇社長)の構造を変えること。しかし、東証が新市場のモデルとする英国ロンドン証券取引所の新興市場AIMは、金融危機に伴う景気悪化で上場企業数が伸び悩み、機関投資家も業績を悪化させ取引が低迷。市場を取り巻く環境は日本も同じで、「いまプロ向け市場を立ち上げても参加者はほとんど見込めないだろう」(大手証券幹部)との冷めた声が大勢を占めている。 金融庁も慎重な姿勢を強めており、認可手続きは遅れている。東証は市場開設時期を年初から今春へと延期したが、それでも「相当厳しい」(東証関係者)。この関係者は「世界的な金融危機の拡大も大きな原因」というが、実は主因は別にある。 新市場では東証の代わりに証券会社などが「指定アドバイザー」として上場審査などを担当するが、その審査項目を取引所規則に盛り込むかどうかをめぐって、新市場を共同運営することになるロンドン証取や証券会社との調整が難航しているのだ。「(関係機関との)協議はフレンドリーにやっている」という斉藤社長の言葉も虚しく、いまや計画の一時凍結や見直しさえ現実味を帯びつつある。

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