世界全体で食料不足が危惧される中で、主要供給国が輸出不能になったら? 日本が頼りにする豪州が、まさしくその危機にある。[シドニー発]「ラッキーカントリー」。南半球のオーストラリアはこう呼ばれる。意味するところは、住みやすい温暖な気候、広大な土地、豊かな自然、地政学的状況(周りに脅威となる国がない)などの条件に恵まれていることだ。しかし、ここ数年で最もラッキーだと国民が実感し、海外からも羨望されるのは、天然資源の豊富さであろう。 豪州は石炭、鉄鉱石にはじまり、天然ガス、銅、鉛、金、亜鉛、ニッケル、ウランなど鉱物資源・エネルギーの主要生産国であり、埋蔵量もふんだんにある。 これら資源は、二十一世紀に入ってからの中国を始めとする新興国の急速な経済成長を受け、需要が大幅に増加した。 国内各地で資源開発が急ピッチで進められたため、労働需給は逼迫し、平均賃金は大きく伸びた。例えば、鉄鉱石の一大産地であるウェスタンオーストラリア州では、運搬トラックの運転手の年収が十五万豪ドル(約一千万円)を超え、州都パースは住宅の建設ラッシュとなった。いわゆる「資源ブーム」だ。 金融危機で資源価格は下落し、需要は急速に冷え込んでいるものの、豪州はこれまでの好景気の“余熱”もあり、先進国の中では金融危機の影響は「軽症」で済んでいる。

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