中東湾岸諸国がもっと水を欲しがっている

執筆者:皆木良夫2009年2月号

人口爆発、石油依存を脱するための経済多角化――いずれも水と電力の需要を急増させる要因だが、油価下落で暗雲も……。[ドバイ発]中東湾岸産油国は、近年の原油価格の高騰で、従来以上にそのオイルマネーの存在感を拡大させた。とはいえ、その埋蔵量には限界がある上、原油のみに依存した経済が脆弱であることは明らかで、すでに彼らは潤沢な資金を元手に、国内の経済開発や戦略的な対外投資を積極的に行ない、原油に頼らない経済構造を創り出そうと動いている。経済規模を拡大させるには労働力が必要で、外国人も含めた人口拡大の動きも急ピッチだ。そこで不可欠なのが水、そして電力の安定供給。湾岸協力会議(GCC)諸国(本文中太字)は、経済開発と基礎インフラの整備・拡大を進めるため、この二つの資源の確保に力を注いでいる。 GCC諸国は言うまでもなく砂漠性の気候だ。日本の年間平均降雨量が約千七百ミリであるのに対し、GCC諸国は百ミリにも満たない。 国連食糧農業機関(FAO)が行なった調査では、二〇〇〇年前後にGCC諸国で使用される水の八割近くは地下水だった(表参照)。サウジアラビアなどこの地域では、地下に海水由来の化石水(数百万年以上循環から切り離された水)が認められる場所や、地下の土砂の粒子間に水が浸透している帯水層がある。ともに塩分濃度の問題で直接の使用には適さない場合もあり、効率的に利用されているとは言いがたいのだが、これらの地下水は原油同様、限りある貴重な地下資源となっている。

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