インドIT(情報技術)四位でシステムの受託開発を手がける有力企業、サティヤム・コンピュータ・サービスが過去数年間にわたって粉飾決算を繰り返していたことが明らかになった。主導したのは一月九日に逮捕された創業者のラマリンガ・ラジュ会長。投資信託を通じてインドに投資してきた日本の投資家は、インド企業のコーポレートガバナンス(企業統治)リスクを突きつけられた格好だ。 利益水増しを明かしたラジュ会長によると、昨年七―九月期の営業利益は六億一千万ルピー(一ルピ=約二円)と公表数字の十分の一以下。同九月末時点の貸借対照表に五百三十六億ルピーと計上された現預金は実際にはそのわずか六%の三十二億ルピーしかなかったという。 ラジュ会長が恐れたのは「業績の悪化→他社による買収→粉飾の発覚」というシナリオ。自身ら一族の出資比率が八・三%(昨年九月末時点)と小さく、買収防衛が難しいという事情が背景にある。同十二月には一族が出資・経営する不動産関連二社をサティヤムに買収させて粉飾をごまかそうとしたが、買収メリットがないと判断した投資家の猛反発で計画は一夜で撤回させられ、万策尽きた。 絶大な発言力を有する経営者の暴走を、複数の社外取締役を擁する取締役会や監査法人がチェックできなかった――。この事実を前に企業統治を巡る議論に火が付いた。「ほかの企業の企業統治にも疑問符を付けるのは適切ではない」(民間銀行最大手ICICI銀行のカマート会長)との声もあるが、投資家の心には響かないだろう。

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