軍事政権による人権弾圧が続くミャンマーで、農産物などの収穫が激減する中、アヘンの原料となるケシの生産だけが伸びていることが国連薬物犯罪事務所の報告書で明らかになった。 たとえば、主要産品のゴムは主産地の南部モン州でここ数カ月で収穫量が七五%減少。米やトウモロコシも減産が続いているという。原因は、自然災害や少数民族との紛争、そして農業人口の減少だ。農産物の収穫減が価格高騰を招き、統制経済下であえぐ国民の暮しをさらに圧迫している。 一方、ケシの栽培は増えるばかり。主な栽培地は、タイ、ラオスと国境を接する「ゴールデン・トライアングル」にある東部のシャン州だが、北部のカチン、南東部のカイン両州でも栽培面積が拡大している。育てやすい換金作物であるうえ、アヘンの価格はこの四年で二倍に高騰。結果、貧しい地方の住民が次々とケシ栽培に乗り出しているのだ。 ミャンマーはアフガニスタンに次ぐ世界二位のケシ産地で、ケシから抽出したアヘンはタイ、ラオス経由の闇ルートを通じて世界中に流される。そのため、国連を始め、ミャンマーも加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)などが再三、ケシ撲滅を要請。軍政は「二〇一四年までにケシ栽培を全廃する」と謳うが、欧米の経済制裁で外貨収入に乏しく、懐事情は「アヘン中毒」状態だ。ケシ栽培を放置するばかりか、むしろ奨励している節すらあるというから、事態の好転は絶望的だ。

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