「国民と人類に対する政治家としての責任」という言葉が、トルコ与党・公正発展党(AKP)の重鎮であるハサン・ムラト・メルジャン国会外交委員長(五〇)の口を何度もついて出た。たとえば、EU(欧州連合)加盟を求め続けることに対するトルコ国民の支持が下がろうとも、諦めることなく加盟努力を続けることの意義を説き続け、EUに対する働きかけを持続することが、「政治家としての国民に対する責任だ」というように。 一九八七年、トルコはEUの前身であるEC(欧州共同体)に加盟を申請。当初は国民の七五%が加盟を支持していたが、イスラム人口の多いトルコを迎え入れることを躊躇する欧州が、人権擁護や言論の自由、キプロス問題などで改善要求を寄越すばかりで加盟手続きが進まないことへの苛立ちから、現在の支持率は五〇%を割っている。「たしかに、トルコと欧州の間には埋めることの難しい文化的な溝がある。だが、一九二三年の共和国建国以来、トルコは一貫して西欧の価値観と社会機構を機軸として民主化と近代化を進めてきた。それは(イスラム系政党であるAKPが政権を担う)現政権下でも変わらない。司法制度や社会インフラを整えていくことは、ただ単にEU加盟条件を満たすためだけでなく、トルコ国民にもメリットがある。だから我々は変革を続けるし、加盟を諦めることはぜったいにないのです」と、メルジャン氏は明言する。

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