オバマ政権「二十一世紀の核戦略」の行方

執筆者:飯塚恵子2009年3月号

“核政策元年”に、どんな方向性が示されるのか。それは、アメリカの「核の傘」に依存する日本にもよそごとではない。[ワシントン発]バラク・オバマ米大統領の一月二十日の就任演説の翌朝、ワシントンのシンクタンク、ブルッキングズ研究所では、演説の内容を読み解く公開シンポジウムがさっそく開かれた。クリントン元、ブッシュ前大統領の両スピーチライターも参加した議論の中で、「特に興味深かった」と指摘された一つが、大統領が「核の脅威を減らす努力をする」と言及した点だった。「オバマ氏は選挙公約で究極的に『核のない世界』を目指すと掲げたが、選挙戦の中心議題にはならなかった。それでも演説で『核』に触れたのは、大統領はやる気だ、というメッセージだ」。シンポジウムのまとめ役を務めたマイケル・フリラブ研究員はこう語る。同様の受け止めはワシントンの内外で聞かれた。 むろん、これはアメリカが一方的に核を手放す、という意味ではない。だが、二〇〇一年の米同時テロ後、一時は核兵器の高性能化の構えも見せた共和党のブッシュ前政権の路線からは、明確な軌道修正だといえる。 新たに民主党のオバマ政権が構築しようとしているのは、(1)大幅な核軍縮、(2)核不拡散体制の再生――の両輪を動かすための「二十一世紀の核戦略」だ。そのために、冷戦後の核兵器の役割と核抑止のあり方を根本から洗い直す作業が始まっている。

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