クリントン米国務長官が初の外遊先に選んだ東アジア歴訪。米人権団体が厳しく批判した。 長官は二月二十日、ソウルで行なった同行記者団との会見で、中国の人権問題を「取り上げ続ける」としながらも、「世界経済危機や温暖化、安保といった問題(での協力)が妨げられるようなことはしない」と明言した。 つまり、経済危機が最優先で人権問題は二の次、というのだ。 しかしこの発言、口が滑ったわけでも、失言でもなかった。オバマ新米政権の戦略的な大方針だったのである。 その八日前、デニス・ブレア国家情報長官(DNI)が発表した「脅威評価年次報告書」は「世界経済危機が、短期的には米国の安全保障上の第一の懸念」と強調していたのだ。 十六ある米情報機関の分析をまとめたこの報告書は毎年、上院情報特別委員会に、DNIが中央情報局(CIA)長官や国防情報局(DIA)局長らとともに出席して発表していた。しかし今回は、ブレア長官が一人で出席して議員の質問に答えた。 オバマ政権が発足して初の脅威評価報告書であり、「経済危機の脅威」を特に強調する狙いがあったに違いない。 ブレア長官はこの中で、新たに高まった脅威として、(1)世界的な経済危機 (2)地球の気候変動 (3)エネルギー資源へのアクセスと食料・水の供給 (4)サイバー安全保障――の四項目を挙げた。

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