「政治とカネ」めぐる逆説

執筆者:2009年4月号

 なぜ政治家はカネに汚いのか、とよく聞かれる。政治家の水準は国民の水準の反映というから、この国はみんなカネに汚いのだということかもしれませんね、などといって逃げるが、実のところは、政治はかなりカネに汚くなくなっているのだ。 政界通によると、自民党の総裁選ではいまはまったくカネが乱れ飛んだりしていないという。カネなどまこうものなら、ばれた瞬間にそのグループはまいた方も受け取った方も政治生命を失うだろうということだった。その人物はこんな話をしてくれた。〈昔は当時のカネで十億円単位の札束が乱れ飛んだものだ。それぞれの陣営の選挙対策本部にはキオスクで売っているビニールコーティングの大きな紙袋やサントリーオールドの箱が山積みになっていた。紙袋には新札で一億円、箱には一千万円入る。自民党総裁選は民間組織の選挙だから、公職選挙法も適用されないので、昔は司法当局も見て見ぬふりだった。各陣営からカネをせびる政治家もいて、二カ所は「ニッカ」三カ所は「サントリー」と呼んだものだ〉 カネが乱れ飛ばなくなってから、派閥は力を失ってきたのだという。巨額のカネを使ってできた政権が、簡単につぶれたら元を取れない。だから必死で政権を守ろうとする。いまは元手がかかっていないから、あるいはカネをやったりもらったりの義理もないので、ダメだということになれば、すぐに総理・総裁を降ろしにかかるのだそうだ。

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