米国新政権の最初の一区切りとして用いられる「就任後百日」が四月末に近づいた。この段階でオバマ政権の対中東および対イスラーム世界への政策がどのような形を取ってきているか検討してみたい。もちろん中東全体に対して、あるいは中東の諸問題に対して具体的な政策が出揃ったわけではなく、大統領の発言から方向性を推測するしかない。 ただし米国と中東の関係の課題は多分にイメージや感情に由来している。米政権の政策そのものの実態と成否だけでなく、「米国イメージ」や「反米感情」が対中東外交の障害となり、中東諸国の政治そのものにも深く影響を与えてしまう。そしてオバマがこの方面で持つ最大の「コンテンツ」はまさにオバマ自身のイメージであり言葉であるだけに、「オバマの言葉」の読みどころを知っておくのは有益だろう。 米大統領選挙戦でのオバマの演説は作り込まれた一連のショーのようだったが、就任後の演説も趣向を凝らし、考え抜かれたものである。 就任後、四月半ばまでに中東とイスラーム世界に向けられたオバマの主要な発言・演説は、(1)就任直後、アラビア語衛星テレビ「アラビーヤ」に与えた最初の単独インタビュー(一月二十六日)、(2)イラン暦新年「ノウルーズ」に合わせたビデオ・メッセージ(三月二十日)、(3)アフガニスタン・パキスタン政策を発表する演説(三月二十七日)、(4)トルコ議会での演説(四月六日)だ。

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