「仕組み債の運用で二十億円の損失」と聞けば、どこかの民間企業の話と思われるかもしれないが、さにあらず。ハイリスク・ハイリターン型の金融商品で大失敗したのは、東証一部上場企業を中心に構成される日本最大の経済団体「日本経団連」だ。 そもそも業界団体がなぜ投機に走ったのか。「事務局のある幹部が個人的に購入したところ儲かったため、二〇〇六年夏に運用担当の会計課長にも推奨したらしい」(関係者) 何やら責任転嫁にも聞こえる話だが、真偽はともかく、今回、会員企業からの年間五十億円ほどの会費収入の約四割を吹き飛ばす結果を招いたことは事実だ。それでも、「あくまで余資なので大勢に影響はない」(別の関係者)というのだから、よほどカネが余っているのだろう。会員企業は派遣切りまでしていても。 手を出した仕組み債はユーロ市場で発行した円建て債券で、年三―五%の高金利が期待できる半面、満期になれば外貨で償還されるため、為替変動のリスクを伴う。購入後の急激な円高ユーロ安が響き、損失を計上する羽目となった。 これまで経団連は資産運用の明確なルールを設けておらず、担当役員も投機を把握していなかった。経団連はかねがね会員企業に対して危機管理や法令順守の徹底を呼び掛けていただけに、財界総本山のメンツは丸潰れ。「余りにもお粗末な管理体制。処分も甘く、民間企業ならクビ」(ある副会長)と追加処分を求める声が強まっている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。