[ワシントン発]三月二十七日、百年の歴史をもつ全国紙『クリスチャン・サイエンス・モニター』の最後の一部が輪転機を離れた時、同僚の中には涙を流す者もいた。ひとつの時代の終わりだった。そして、『モニター』はオンラインでの「刊行」に移行。紙で読みたいという読者向けには新たに週刊紙の発行を始めた。『モニター』がオンライン発行に切り替えたのは、新聞業界全体の苦境を象徴する出来事でもあった。ウェブに読者と広告を奪われて、新聞のビジネスモデルは崩壊。新聞各社はコスト削減と新たな収入源の模索に奔走したが、昨秋以降の経済危機で状況は悪くなるばかり。地方や海外の支局を閉鎖し、スタッフを減らし、賃下げを行なっても、廃業あるいは再生手続きを始めるしかなかった新聞もある。 高級紙とて例外ではない。『ニューヨーク・タイムズ』紙を発行するニューヨーク・タイムズ社も五千万ドル(約五十億円)の赤字を抱え、傘下の『ボストン・グローブ』紙(ハーバード大学の“地元紙”)の閉鎖を検討している。ブロガーのポール・ギリンが二〇〇七年三月に「新聞の臨終看取り(www.newspaperdeathwatch.com)」というサイトを立ち上げて以来、閉鎖された米主要紙は十を数える。この他、『モニター』を含む八紙が、オンラインのみか、印刷とオンラインを組み合わせたモデルを「模索中」と分類されている。

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