不法滞在者「五年で半減」の実態を追う

執筆者:出井康博2009年5月号

 日本に不法滞在する外国人が急速に減っている。法務省入国管理局によれば、二〇〇九年一月一日現在、その数は約十一万三千人と、五年前と比べ半分近くまで減少。〇四年から入管当局が始めた「不法滞在者五年半減計画」が、数の上ではほぼ達成された格好だ。 とりわけ〇八年には、一気に四万人近い不法滞在者が強制送還された。その背景には秋以降、急激に悪化した景気の影響もある。不法滞在者の大半は、韓国や中国、東南アジア諸国出身の不法就労者だ。不況で職を失った彼らの多くが、日本での生活に見切りをつけ、強制送還される道を選んだと思われる。 本連載では第四回(〇七年十一月号)において、「不法就労者が支える『世界のトヨタ』」と題し、外国人研修・技能実習制度(以下、研修制度)で来日した若者たちが研修先の職場から失踪、もしくは観光ビザなどを使い再入国した後、人手不足が深刻化する自動車産業の下請け現場で貴重な労働力となっている事実を取り上げた。 研修制度は一九九三年、発展途上国の若者が日本で技術を身につけ、帰国後に母国で活躍してもらうことを目的として始まった。〇七年には、研修生として来日した外国人は初めて年間十万人を超えた。しかし、その実態は、日本人の働き手が集まらない中小企業が本来は入国が禁止されている外国人の単純労働者を安い賃金で雇うための手段に過ぎない。

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