不況知らずを気取るボーイングの「イカロスの翼」

執筆者:ダン・リード2009年5月号

世界同時不況におののくライバルや航空業界をよそに、空高く舞い上がり続けるボーイング。「翼が溶けるぞ」の声も聞かず……。[フォートワース発]旅客機メーカーが謳歌してきた、かつてない好景気に急ブレーキがかかっている。にもかかわらず、世界二強の一角、米ボーイングには、迫りつつある潜在的な脅威への危機感が見られない。 同社の商用機部門は過去四年に計四千百三十四機もの大型旅客機を世界中に販売しており、二〇〇七年には年間千四百二十三機という最高記録も達成した。だが、パーティーは終わった。販売機数は、航空各社が燃料の高騰や景気減速による旅客減に苦しんだ昨年には六百六十八機に急減。今年一―二月にはさらに二十二機まで落ち込み(前年同期は百九十五機)、一方で、未完成ながらすでに受注済みの最新鋭機ボーイング787ドリームライナーに三十二機ものキャンセルが出た。差し引きで早くも十機のマイナスだ。 その787の先行きは非常に厳しい。ボーイングの“初出荷”分のうち五十機を発注している全日本空輸(ANA)への納入は当初、今年八月が予定されていた。この日程さえ製造の遅れのため数度の先送りを経て決まったものだったが、新たな延期により、今では来年四―六月期にまで遅れる見通しだ。全日空はボーイングに違約金を請求することや、787の一部を既存の767のリース期間延長で置き換えることを検討している。

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