中国の国有大手商業銀行が、金融危機を追い風に世界市場で存在感を強めている。金融危機で大幅な赤字を計上している日欧米の金融機関とは対照的に、中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行の大手三行の二〇〇八年の税引き後利益は、前年比一四―三五%の大幅増となった。世界の銀行の株式時価総額ランキングでは、この三行をはじめ中国勢が上位を独占している。 最大手の中国工商銀行の〇八年の税引き後利益は一千百十二億元(約一兆六千億円)と前年に比べ三五・二%増。金融危機の影響で外国債券などへの投資損失は約四十億元増加したものの、昨年半ばに中国政府の金融政策が引き締めから緩和に転じたことなどで融資残高が膨らみ、利息収入が一七%増えた。中国建設銀行、中国銀行もそれぞれ三四・〇%、一四・四%の増益となった。 今年に入ってからも、中国の金融機関の融資残高は政府による景気刺激策などのために膨張が続いている。中国の金融界では「世界経済は低迷を続けるが、中国経済は安定成長が続く。銀行のチャンスは大きい」(中国銀行の肖鋼・董事長)と、今年も大幅増益を見込む強気の声が多数を占める。 さらに、今年三月中旬時点の世界の金融機関の時価総額ランキングでは、一位が一千七百五十三億ドルの工商銀行、二位が建設銀行、三位が中国銀行と中国の銀行が上位三位までを独占し、十二位の交通銀行、十七位の招商銀行を合わせ二十位までに五行が入った。最近では、日本や欧米の金融機関が資金不足となる中、豊富な資金を活用した中国勢による海外資源の買収も活発化している。また、金融機関の時価総額が大きくなれば、三角合併などの手法によって企業買収もしやすくなるため、「近い将来、中国勢が海外の金融機関買収に乗り出す可能性もある」(邦銀関係者)と警戒する声も聞かれ始めた。

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