四月上旬にロンドンで開かれた二十カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)では、租税回避地への制裁が大きなテーマとなった。ドイツやフランスの欧州勢が米国を巻き込んで包囲網を形成し、グローバル化の恩恵を最大限に享受してきたタックスヘイブンを土台から揺さぶっている。「租税回避地つぶし」は数年前から欧州の悲願だった。フランスでは、低い税率と緩い規制で世界中から資金を呼び寄せる手法に政財界からの反発が強く、サルコジ大統領は脱税を黙認する国を国際社会が制裁するよう繰り返し呼びかけていた。 それに隣国ドイツが乗った。二〇〇八年二月に脱税事件を摘発した際には、ナチス政権下で対ソ諜報戦に従事した秘密情報機関が母体の連邦情報局(BND)を投入。スイスとオーストリアにはさまれた、租税回避地として有名な小国リヒテンシュタインの内部協力者から「脱税者リスト」を秘密裏に入手し、容疑者を徹底追及した。 富裕層の資産・資金が租税回避地に流出すれば欧州社会の根本にある「所得の再配分」が成り立たなくなる。格差拡大への批判が強まるなか独仏政府は脱税問題を素通りできなかった。当初、規制強化に消極的だった英米も、行き過ぎた自由主義を修正する思惑で同調。「脱税撲滅」を国際協力案件にするお膳立てが整った。

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