『「縮み」志向の日本人』李御寧著講談社学術文庫 2007年刊(単行本は学生社より1982年刊。現在も入手可能) 先ごろ野球のワールドベースボールクラシック(WBC)で二連覇した日本チームについて、米国などでは「スモール・ベースボールの成果」と評しているという。安打でこつこつ点をあげ、投手は変化球をふくめ絶妙なコントロールで打者を抑えるという緻密(?)な野球だったからだ。その結果、ホームランは少なかったが防御率は最高だった。しかもクリーンアップにバントまでやらせている。 メジャーリーグの野球とは明らかに違うというのだ。 この話に接したとき、とっさに李御寧氏の著書『「縮み」志向の日本人』を思い出した。この本は外国人による日本人論の名著として名高い。日本野球に対する「スモール・ベースボール論」について「李御寧さんならどう思うかな?」「その通り、とひざを打つだろうな……」と思ったからだ。 さっそく著書をひもといて、日本の野球についての記述はなかったか探してみた。すると一カ所だけあった。日本野球を分析したホワイティングの『菊とバット』からの引用を参考に次のように書いている。「……米国では多くのバッターはフォームやスタイルなどは気にせず、いい結果を生むことだけを念頭におくのに、日本では『良き野球選手とは自分自身の身体の動きをいつも正しいフォームに合致させる者をいう。それさえやれば、他のことはすべて自然についてくるという』のです。ホワイティングさんはここでフォームやスタイルといってますが、これこそがあの『構え』なのです」

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