侮るべからずパキスタン・ネットワーク

執筆者:竹田いさみ2009年5月号

 日本からパキスタンの首都イスラマバードや商業都市カラチに飛ぶのは、簡単ではない。そもそも直行便がない。パキスタン国際航空は、以前から中国・北京経由でイスラマバード、さらに接続便でカラチに乗り入れているが、利用客は少ない。成田空港から最短の十二時間でイスラマバードに到着できることになっているが、大幅な遅延が頻発するため、ビジネス客に敬遠され続けてきた。遅延が二十四時間を超えた不名誉な伝説さえある。予定された会議に間に合わなかったという日本人ビジネスマンの苦労話は、もはや悲劇を通り越して喜劇である。 遅れずにパキスタンに辿り着くには、どんなフライトの選択肢があるのか。タイ国際航空を利用してバンコク経由でカラチを目指すのが、乗り継ぎ時間のロスも少なくベストだ。かつてはシンガポール航空がカラチに乗り入れていたが、政情不安や不採算性を考えて、撤退してしまった。収益性と安全性を天秤にかけ、フライトを臨機応変に変更することで知られる同航空が、パキスタンを切り捨て、その代わりにインド便を拡充したことは言うまでもない。 そんな中、ドバイの国策航空会社エミレーツのみが、パキスタンの主要都市を漏れなくカバーしている。それだけドバイとパキスタンとの間には、人的な往来があるということだ。ドバイ経済を底辺で支えてきたのは、パキスタン人やインド人、バングラデシュ人の“南アジア三兄弟”である。いずれも英国の植民地として歴史を共有しつつも、喧嘩別れしておのおのが独立国となった。競争力のある国内産業がないパキスタンにとって、海外への出稼ぎは重要な資金源。そのためパキスタンから労働者が大挙してドバイにやってきたのだ。建設現場を歩けばパキスタン人が眼にとまり、旧市街にはパキスタン人経営の貴金属店が軒を並べる。

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