軍政はこれまで国際社会に向けて「現状は民主化に向けたプロセスの一環」であると、人権弾圧やNLD党首でノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁を正当化してきた。それだけに、その「民主化プロセス」の「重要な節目」とする総選挙には、何とかNLDに参加して欲しい(ただし、勝たれては困る)。このため軍政は、強硬なNLD党員や民主化運動家には逮捕・勾留という強硬手段を継続する一方、懐柔策によるNLDの内部分裂を図っている。 こうした状況の中でNLDは、総選挙に参加する条件として、NLD幹部を含むすべての政治犯の無条件釈放、軍政主導で昨年制定された憲法の改正、自由で公正な選挙の実施とそのための国際監視組織の導入、の三つを示した。 これらは軍政にとっていずれも承服できないものばかりなだけに、NLDが来年三月とも予想される総選挙に事実上不参加を表明したとも見られている。 こうしたNLDの強硬姿勢を受けて、軍政側はNLDが参加しない総選挙をどのように「民主化へのロードマップ」の一つと位置づけ、選挙の正当性を内外に示すかの検討に入った模様だ。今後、軍政とNLDを中心とする民主化勢力の緊張が高まる恐れもある。これに軍政への不満を抱え込む僧侶や学生、一般民衆、少数民族がどう対応するか、ミャンマー情勢から目が離せない。

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