大手流通業「不振の真因」を分析する

執筆者:新田賢吾2009年6月号

総合スーパーや百貨店、コンビニまでもが販売不振にあえぐ一方で、安売りスーパーや服飾店は好調。明暗を分けたものはいったい何か。 日本の流通業界大手、イオングループに異常事態が起きている。今春、大牟田市(福岡県)、野田市(千葉県)、木更津市(千葉県)、常滑市(愛知県)など全国七カ所で計画していた大型ショッピングセンターの開発を相次ぎ中止または延期した。野田市の六万七千平方メートルを筆頭に、いずれも地域でトップクラスの床面積を持つ大規模店舗になるはずだったが、見直されることになった。 米国発の世界経済危機によって、日本の消費が一気に不振に陥ったことが直接的な原因とされる。実際、二〇〇八年度の全国のスーパーの売上高は既存店ベースで前年度比一・七%減、百貨店の売上高は六・八%減という大きな落ち込みになった。郊外型モデルの限界 イオングループは、これまで青森県、北海道など、地方のなかでも、かなり辺鄙な場所に一千台、二千台収容といった広い駐車場を持ち、多数の専門店をテナントで入れたモール型の郊外型ショッピングセンターを開発してきた。都市型、駅前立地のダイエーやイトーヨーカ堂と明確な戦略の違いを打ち出すことで、イオンは急成長を遂げた。車によるアクセスを確保することが、ショッピングセンター成功の条件となったのだ。そのイオンが突然、成長の原動力だった大規模ショッピングセンターの開発中止に踏み切った背景には、景気後退に伴う消費不振だけでは説明できない、流通業を取り巻く構造変化がある。

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