国に頼らず人材確保に動く介護業者

執筆者:出井康博2009年6月号

 五月十日、フィリピンから三百人近い介護士・看護師が来日した。二〇〇六年秋、小泉純一郎首相(当時)とアロヨ大統領が、介護士らの日本への受け入れを含む経済連携協定(EPA)に合意して二年半。やっと実現した受け入れだが、その仕組みに対し、日本とフィリピン双方で不満が高まっている。 EPAを通じての外国人介護士らの受け入れは、昨年八月のインドネシアに続いてフィリピンが二カ国目。インドネシアとの協定と同様、日本はフィリピンからも最初の二年間で介護士六百人と看護師四百人の計一千人を受け入れる計画だ。初年度の受け入れ枠は五百人。今回は、別枠で募集される介護士五十人を除いた四百五十人が来日する予定だったが、実際の受け入れ数は三分の二以下に留まった。定数割れは、五百人の予定が二百人程度しか来日しなかったインドネシアに続くものだ。 原因は、日本側の介護施設や病院が受け入れに消極的になっているからだ。受け入れ費用は日本人を雇う場合と変わらず、介護士らの日本語能力にも不安が強い。しかも入国から四年以内に日本語で国家試験に合格しなければ、就労は打ち切りになってしまう。これでは、いくら外国人の採用に関心があっても、施設側が二の足を踏むのも無理はない。

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