ジェネリック(後発)医薬品大国インドの製薬業界にとって、新型インフルエンザが“神風”となりつつある。代表的な抗インフルエンザ薬にはロシュ(スイス)の「タミフル」と英グラクソ・スミスクラインの「リレンザ」があるが、インドではどちらについても安価なジェネリック版の製造が可能なのだ。 四月末には国内最大手ランバクシー・ラボラトリーズが、タミフルの後発薬二百万人分の製造が早期に可能だと発表。業界トップの座を同社と争うシプラは、タミフルに加えてリレンザのジェネリック版も手がけており、百五十万人分を一カ月程度で用意できることを明かした。 いずれも、インド政府が国内での感染に備えて備蓄を二百万人分上乗せするため、近く調達入札を行なうとの観測を受けての動きだ。しかし、新型インフルエンザの世界的な流行が深化・拡大すれば、ジェネリック薬の海外出荷も本格化すると見られる。後発薬の輸出で起きがちな知的所有権などの問題も、今回のような危機に際しては棚上げされるとの見方が強い。 ITサービス産業と同様に国際競争力が高いとされ、インド・ブームの一翼を担ってきた製薬産業。その勢いは、欧米勢のみならず、障壁の高い日本の製薬会社との間でもM&A(合併・買収)が進むほどだった。

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