中国製造業「驚くべき急発展」の背景

執筆者:五味康平2009年6月号

世界の景気回復の鍵を握る中国。日米欧の企業が深刻な業績不振に沈むなか、中国のメーカーはしたたかに成長を続けていた――。 トヨタ自動車、ホンダ、韓国・現代自動車など日韓メーカーはもちろん、独ダイムラー、BMWなど欧州勢、さらに破綻の瀬戸際の米ゼネラル・モーターズ(GM)、フォードまでが出展した四月下旬の上海モーターショー。世界の自動車産業を覆う不景気風をまったく感じさせない熱気のなかで、ひときわ目立ったのは外資との合弁ではない、中国の民族系自動車メーカーだった。 小型車「QQ」が人気を集め、中国自動車市場でシェアを伸ばす奇瑞汽車はピンクのパステルカラーの新型QQやスポーツ多目的車(SUV)などに加え、セダンをベースにしたストレッチ・リムジンを展示、開発力の幅の広さを誇示した。世界トップクラスの電池メーカーから乗用車製造に参入した比亜迪汽車(BYD)は、プラグインハイブリッド車や電気自動車「e6」をブースに並べ、自動車産業の新しい流れに対応する技術力をアピールした。 中国の自動車産業の歴史は決して浅くはない。新中国建国から十年足らずの一九五〇年代半ばには第一汽車など国有メーカーが軍用の小型トラックの生産を始めている。もちろん当時友好関係にあったソ連からの技術支援があっての話だが、トヨタ自動車が朝鮮特需による米軍向けトラックの量産で何とか食いつないでいた時期と重なる。その時点では、日中の自動車産業に大きな格差があったとは言えない。

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