民主党の小沢一郎代表が五月十一日についに辞任を決断したことは与野党双方に大きな衝撃を与えた。衆院選に向けた自民党と民主党の攻防は、一旦ふりだしに戻ったと言えるだろう。 民主党は三月三日に小沢氏の公設第一秘書の大久保隆規容疑者が逮捕されて以降、それまで上昇基調にあった政党支持率が一転して下降線をたどっていた。小沢氏の辞任によってその傾向に歯止めがかかり、上昇に転ずるのは確実とみられるが、その勢いを衆院選まで持続できるかどうか。それは、新代表の力量による。 これに対して、自民党、とりわけ麻生太郎首相は頭を悩ませていることだろう。どの時期に衆院解散・総選挙を仕掛けるのが有利かという損得勘定について、再考が必要になったからだ。 それだけではない。小沢氏の辞任は、麻生首相自身の進退にも影響を与えかねない。小沢氏の辞任に続く新代表選出で民主党支持率が上昇すれば、自民党内で再び「麻生首相では衆院選は勝てない」という空気が濃くなり、麻生降ろしの動きが強まる可能性があるからだ。「楽観論」はどこへやら 十一日午後、小沢氏が辞任の意向を漏らしたという第一報は瞬く間に政界中に広まった。麻生首相サイドは、選挙直前までは小沢氏が続投するだろうということを前提にして戦略を立てつつあっただけに、驚きを隠せなかった。麻生首相は努めて平静さを装っているが、首相官邸で記者団と懇談した鴻池祥肇官房副長官は、その影響について、「民主党よりもこっちの方がバタバタしています」と述べた。これが麻生首相周辺の正直な感想だろう。

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