GM破綻が示す「三つの終わり」

執筆者:五十嵐卓2009年7月号

七十七年間にわたって世界に君臨した巨大メーカーが破綻した。金融危機だけでは語れない、その意味を問う。 米ゼネラル・モーターズ(GM)の連邦破産法十一章(チャプターイレブン)申請を「経営破綻」とみるか、「再建に向けた法的整理」とみるか、日本の新聞の表現は割れた。日本の民事再生法と同じだから再建に向けた動きとするのは法律的には正しい解釈だろう。だが、七十七年間にわたって世界最大の自動車メーカーであり、二十世紀の米国を代表する製造業だったGMが今回の処置で元通り復活するはずはない。新生GMはかつてのGMとはまったく異なる企業になるのは確実だ。その意味ではGMは間違いなく「破綻」した。 GMの破綻は「三つの終わり」を意味している。第一は「二十世紀型自動車の終わり」、第二は「米国の製造業の終わり」、第三は「米国の産業政策の終わり」である。「三つの終わり」を順番に検証していこう。 GMのチャプターイレブン申請から三日後の六月四日、三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)で電気自動車「アイミーブ」の量産が始まった。電気自動車専業メーカーの量産は世界に例があるが、ガソリンエンジン車を量産していたメーカーが本格的に電気自動車を生産ラインに乗せたのは事実上初めて。世界の自動車産業史の大きな節目と言ってもよい出来事だ。

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