対北「武力行使」できない米国のジレンマ

執筆者:ジェームズ・キットフィールド2009年7月号

本気で核保有国になることを目指す北朝鮮。軍事オプションをとることはきわめて困難だが、「最悪のシナリオ」はあるのか。[ワシントン発]朝鮮半島に起きている危機、つまり北朝鮮が「孤立という檻」をがたがたと揺さぶって挑発する状況は、「見慣れたもの」と化した感がある。 またも北朝鮮は核実験を行ない、査察官を拒絶した上に、寧辺にある核施設を再稼働し、短距離弾道ミサイルを発射した。そしてアメリカと日本は、国連安全保障理事会で、北朝鮮に対し、これまで以上に厳しい制裁を加えるよう提案した。それに対する北朝鮮の反応は、捕らえていたアメリカ人女性記者二人に「労働教化十二年」の刑を与えるという、さらに挑発的なものだった。 こうした展開には既視感が否めない。実際、国際社会にとって、一連の出来事は経験済みのことだ。最も顕著な例は一九九四年。北朝鮮が、核兵器製造目的で寧辺の核施設からプルトニウムの燃料棒を取り出すと脅しをかけた時、アメリカは北朝鮮を攻撃する寸前までいった。また、二〇〇六年、北朝鮮が最初の核実験を行なった時も緊張は高まった。 だが、現在の危機はこれまでとは根本的に異なっている。今回は、潜在的に一層解決困難で危険、かつ今まで以上に一触即発の事態なのである。五月二十五日に行なった核実験は、前回より大きな核爆発を起こした。また、四月五日に発射した三段式の長距離ミサイルは飛距離を伸ばしていた。これらは、北朝鮮が確実に核兵器製造およびミサイル技術を進化させていることを表している。

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