六月七日投票のレバノン国民議会(定数百二十八議席)選挙は「親米・反シリア派連合」が七十一議席を獲得して勝利。イスラム教シーア派武装組織ヒズボラが主導する「反米・親シリア派連合」は、伸張が予想されたものの、五十七議席にとどまり敗北した。 宗派に基づく政治制度を持つレバノンの選挙は、イスラム教スンニ派が親米、シーア派が反米とくっきり色分けされている。今回は両陣営に割れたキリスト教系の候補者が争う選挙区の帰趨が勝敗のカギを握った。そのため、両陣営は「これまでにない巨額の金が乱れ飛ぶ激しい選挙戦」(地元紙記者)を展開。親米連合を推すサウジアラビアや反米連合を支持するイランの資金が中心となり、一票の「値段」は千ドル前後(約十万円)にまで跳ね上がったといわれる。 中でも、レバノン東部のベカー高原の中央部に位置するザハレ選挙区は、キリスト教系の五議席をめぐる激戦となった。投票所周辺では、久しぶりに帰国し親族らとの再会を祝う在外レバノン人の姿であふれかえった。選挙のために帰国した人数は二万五千人とも報じられたが、地元有力紙アンナハルの記者は、「もっと多いのは確実だ」と見る。両陣営は貴重な票を少しでもかき集めようと、航空券代や宿泊費までも用意したとされる。

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