急減する「顧客」を奪い合う受験産業の生存競争

執筆者:相沢清太郎2009年7月号

不況の波を被りにくいとされた業界を、少子化の波が襲っている。生き残りをかけた合従連衡が進むが、「正解」はみえない。 今年二月、中学受験最大手の日能研が、愛知県内に四つの教室を増設した。経営にあたるのは、大学受験予備校の河合塾と共同で設立した新会社日能研東海。河合塾で学ぶ小学生二千人は、この二月までに日能研東海に移った。両社は二〇〇七年秋に設立準備室をつくり、昨年、二教室をオープン。今年から中学受験市場で拡大のアクセルを踏む。 両社は、これとは別に新会社ガウディアを設立。独自開発のプリント教材を使い、繰り返し自学自習させる学習教室を運営する。対象は同じ小学生でも、こちらのターゲットは低学年。全国で百七十教室を構え、ロケットスタートを切ってみせた。 だが、大手受験業者による強者連合の誕生かと思いきや、同業他社は「狙いは経営効率アップ」と冷ややかだ。河合塾の河合弘登理事長は、日本興業銀行出身で前理事長の父、斌人氏の後ろ姿を見て育った。新会社への事業移管を機にコスト管理の厳格化を進める意図を読み取る塾関係者は多い。現に、河合塾側の講師の一部は、新会社への移行に伴い“リストラ”された。 なぜ、大学受験を主戦場とする大手予備校が小学生の「市場」に手を伸ばしたのか。背景にあるのは少子化だ。児童・生徒の数は急ピッチで減少。たとえば、〇九年度の十八歳人口は約百二十万人と、平成に入ってからのピーク(一九九二年)から四割も減っている。その影響を直接受けているのが大学受験予備校なのだ。

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