米内政最大のテーマ「健康保険制度改革」の行方

執筆者:リンダ・フェルドマン2009年7月号

四千六百万人が「無保険」というアメリカの「慢性疾患」。オバマ政権はこれを根治することができるか。今秋が勝負どころだ。[ワシントン発]アメリカ経済は病んでいる。比喩ではなく、文字通り。しかも、金融市場の崩壊が引き起こした現在の危機の底流には、別の慢性疾患がある。治療を施さなければ国全体を壊死させてしまう病巣――それはアメリカの健康保険制度である。 世界最先端の医療研究が米国で行なわれ、世界有数の医療専門家がこの国に存在することは、一面の真実だ。しかし、一般市民にとっての医療は、はるか昔に機能することを止めてしまった。医療費はインフレ率を上回る速度で高騰。国内総生産(GDP)に占める医療費の割合は一七%で、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で一番高い(二〇〇八年版のデータによると、日本は八・二%で二十一位)。 とりわけ、世界で最も豊かなはずの国でありながら恥ずべきことは、アメリカの総人口三億六百万人のうち四千六百万人もの人々が、健康保険に加入していないことだ。彼らが定期健診を受けることはない。体の具合が相当悪くなって初めて、救急センターに運び込まれることになる。救急センターでの治療費は病院負担のため、巡り巡って支払い能力のある他の人たちの負担となる。

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