いよいよ始まるパナマ運河「百年目の大拡張」

執筆者:クリス・クラウル2009年7月号

世界の物流を左右する巨大プロジェクト。その影響を見越して海運関係者は次の一手へと動き出している。[パナマシティ発]パナマ国内の、とある秘密の場所――複数の監査人と武装兵士が監視するなか、パナマ運河庁高官が総額五十二億五千万ドル(約五千二百五十億円)にのぼる運河拡張工事の最重要部分である水路建設の入札書類を精査している。現在パナマ運河を航行する船の三倍近い積載量をもつ「スーパーサイズ」の船が航行できるよう、太平洋側とカリブ海側の二つの水路を拡張する工事の施工業者を選定するための入札だ。 早ければ六月中にも、パナマ運河庁は提案書を出した三つの企業グループの中から施工業者を決定する。そのうちの一つは、米最大手ゼネコンであるベクテル、日本の大成建設と三菱商事を含む共同企業体だ。 業者選定では、最も建設費が低いことに加え、技術的「価値」が最も高いことが重視される。選定にあたる十五人は全員パナマ運河庁の職員で、情報漏れを防ぐため関係文書の持ち出しは厳禁。作業が行なわれている部屋には電話もない。世界全体で九%の輸送量減 業者が決まれば拡張工事は年内にも着手され、パナマ運河建設からちょうど百年になる二〇一四年の完了が予定されている。太平洋とカリブ海の両側にある水路が計画通りに拡張されれば、「ポスト・パナマックス」と呼ばれる巨大コンテナ船が運河を通過できるようになる。現在、パナマ運河を通過できる船の最大の大きさは、幅三十二・三メートル、長さ二百九十四・三メートル、吃水十二・四メートル。通常のコンテナなら五千個の積載が可能だ。

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