鳩山邦夫総務相が六月十二日に更迭されたことによって、長く続いた日本郵政の西川善文社長と鳩山氏の闘争はとりあえずの決着をみた。この一件で麻生政権が深く傷ついたのは間違いない。しかし、政権が傷を負ったのは、重要閣僚のクビを切らざるを得ない事態に陥ったからだけではない。むしろ政権にとって痛かったのは、麻生太郎首相の決断力の欠如が露呈してしまったことである。「もたもたしている印象を与えなかった方がよかった」 自民党の伊吹文明元幹事長は十二日、今回の問題をそんなふうに総括した。発端は半年前にさかのぼる。昨年十二月二十六日の日本郵政の取締役会で全国各地に点在する保養施設「かんぽの宿」をオリックスに一括譲渡することが決定された。年明けの一月六日、鳩山氏がこれに噛み付いたことによって戦端は切り開かれた。五月になると、鳩山氏は六月中にも予定されている西川氏の続投を認可しない方針を表明。西川氏には辞任する考えはまったくなかったため、事態は泥沼化した。「かんぽの宿」問題はおくとしても、鳩山氏が西川氏の進退に言及してから一カ月近くがたっていた。その間、麻生首相は鳩山氏をはじめとする閣僚らと協議を重ねたようだが、鳩山氏を切るにしろ、西川氏を切るにしろ、結論を出すのが遅すぎた。この問題では、小泉純一郎元首相が推進した郵政民営化の正否が論争になったが、それ以上に問われていたのは、首相のリーダーシップだったのだ。

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