インドの水資源開発への資金提供を決定したアジア開発銀行に対し、中国外務省が非難を浴びせた。開発の舞台はインド北東部のアルナチャルプラデシュ州。アジア開銀は今年から二〇一二年にかけて、同州に流れるブラマプトラ川の治水と水資源開発などのため、二十九億ドル(約二千九百億円)をインドに融資することにした。だが、中国もブラマプトラ川の水資源を渇望しているのだ。 チベットに源流をもつブラマプトラ川は、中国との国境地域を経て、インドやバングラデシュに流れ込む。しかも、開発予定地域は、中印の間で国境線が未画定のままだ。 中国は、ブラマプトラ川の源流の流れを変え、一年間に流れ込む七百十四億立方メートルの水のうち四百億立方メートルを引き込んで、ゴビ砂漠や北西地域で使おうと動いていた。一方、インドは豊富な川の水を利用するため、水力発電所を作ろうと目論んでいた。インドが将来的に計画する十五万メガワットの水力発電のうち、五万メガワット分を生み出す水流のある川がこの地域に集中している。ブラマプトラ川はその最たるものだ。 インドのシン首相と中国の胡錦濤国家主席は六月十五日の会談で「戦略的パートナー」として国境問題の早期解決を目指すことなどを話し合った。だが、中国外務省がアジア開銀を非難したのは、首脳会談からわずか二日後のことだった。

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