七月八日の浜田靖一防衛相の与那国島訪問が陸上自衛隊を困惑させている。突然の訪問の狙いは陸自の部隊配備。降って湧いた「国境の島」への配備話に、陸自関係者は「だれがみても衆院選対策」と不満を隠さない。 きっかけは、六月三十日に外間守吉町長と崎原孫吉町議会議長が防衛省を訪問し、陸自の誘致を求めたこと。 もともと南西諸島への部隊配備は陸自が長年、計画してきたこと。だが、陸自幹部は「沖縄本島には陸自混成団が配備されていますが、軍拡を続ける中国への対応には不十分。そこで地勢上とインフラ面から、石垣島か宮古島に一個中隊(約二百人)の配備を検討しています。面積が狭く、住民が千六百人しかいない与那国は候補にすら挙がっていない」と明かす。 浜田氏の強い意向を受けて、陸自は部隊配備の検討を始めたが、「配備は軍事合理性に基づいて決めるもの。思いつきで国防問題が左右されていいのか」と否定的な意見もあるという。 浜田氏が急に国境防衛に目覚めた背景について、防衛省関係者はこう言う。「浜田氏は田母神俊雄前航空幕僚長の懸賞論文問題で、面会を求める田母神氏に電話で更迭を言い渡し、制服組からの信頼を失った。ソマリア沖の海賊対策では自ら『新法を根拠に派遣すべき』と主張しながら、結局、自衛隊法だけで護衛艦を送り出した。衆院選挙が近づいたこの時期の与那国訪問は防衛相としての実績づくりとみられています」

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