あえなく頓挫した「取引所の大掃除」構想

執筆者:大神田貴文2009年8月号

地方には上場銘柄の大半が「売買なし」の証券取引所がある。金融庁は“整理”を目論むが、地ならし段階で既得権者が猛反対――。 東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、それにジャスダック。日本には証券取引所が六つもある。かつて店頭市場と呼ばれたジャスダック以外の取引所は、それぞれ「マザーズ」「ヘラクレス(ジャスダックと統合準備中)」「セントレックス」「アンビシャス」「Qボード」という新興市場も併設する。 だが、国内の株取引では、東京証券取引所が全売買代金の九割を超える圧倒的なシェアを持ち、そのほとんどを大企業中心の東証一部市場が占める。内外の機関投資家にとって日本株マーケットは東証と同義であり、他の市場は眼中にない。 札幌証取を例に考えてみよう。北海道庁や北洋銀行本店などに近い、北海道経済の中心地に位置しているが、「札証」の場所すら知らない地元のビジネスマンは少なくない。 上場しているのは七十九社。東証と同じ条件で株取引が可能なはずだが、大半の銘柄は一日に一株も売買されない。というのも、五十七社が東証と重複上場し、東京を取引の主戦場にしているからだ。株主にとって売買件数の少ない地方での重複上場は経費の無駄遣いでしかなく、すでに多くの企業が札証を去った。北海道電力や雪印乳業といった「地元とのしがらみ」(北電関係者)の強い企業が残留しているが、重複上場解消の流れは止まりそうにない。

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