インドのフラッグ・キャリア「エア・インディア」が経営危機に瀕している。航空旅客の減少で運転資金を手当てできず、六月の給与支払いを二週間先送りしたうえ、幹部には七月給与の自主返上を要請した。サービス意識の希薄な国営企業体質が招いた顧客離れは深刻で、再建への道のりは険しい。 エア・インディアを運航するのは国営インド航空公社。二〇〇七年に国際線主体だった旧エア・インディアと国内線のインディアン航空が経営統合して発足した。商業都市ムンバイのアラビア海に臨む一等地に高層の本社ビルを構え、従業員数は三万一千人。そんな同社を長年の経営不在が蝕んだ。 国内線の集客実績を見れば問題は明白だ。旧インディアン航空時代の二〇〇〇年度から直近の〇八年度までの年間乗客数は六百二十万―八百万人の間にとどまった。国内線の市場規模はこの間の経済成長で約三倍に膨らんでおり、その大半をみすみす民間に奪われたことになる。 経営危機を受け、記者会見したパテル民間航空相は航空公社に「大がかりなリストラが必要だ」と迫り、「実業界で優れた業績を上げた人々を迎え入れる」と経営陣の入れ替えも表明した。タタ財閥のラタン・タタ会長やIT(情報技術)大手インフォシス・テクノロジーズのナラヤナ・ムルティー会長らの名前も浮上している。

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