医療や介護の現場が崩壊したのは小泉改革のせいではない。業界と行政の「構造」を変えない限り、さらに悲惨な未来が待ち受ける。 去る六月二十三日、今後の経済・財政運営の政府方針を決める「骨太二〇〇九(経済財政改革の基本方針二〇〇九)」が閣議決定された。 消費税率の引上げ時期の明記やプライマリー・バランス(財政安定化の指標となる国の財政収支)の黒字化目標の取り扱いと並んで最も注目されたのが、社会保障費を毎年二千二百億円削減するとの公約の扱いである。これは、小泉政権発足以来実施されてきた抑制策を引き継ぎ、「骨太二〇〇六」において、二〇一一年まで毎年二千二百億円の社会保障費削減が閣議決定されていたものであるが、今回、日本医師会などの業界団体やその意を受けた自民党厚生族議員の猛反発により撤廃が決まり、再び社会保障費の際限なき歳出拡大路線が始まった。 これを何かに例えるならば、「メタボ中年男の刹那的リバウンド」であろう。日本経済を人に例えれば、その年齢は既に五十歳代の中年である。若い頃(高度成長期)と同じ暴飲暴食(社会保障費拡大)を続ける体力はなく、健康診断で医者にダイエット(その抑制)を指示された。といっても、大した内容ではない。毎年一兆円以上も自然膨張する社会保障費に対し、その拡大幅をたとえ僅か(二千二百億円)でも小さくするというものだ。ダイエットに例えれば、せいぜい、夜十時以降に食事をしない、週に一日休肝日を作るといった程度の内容で、それを続けても太り続けることに変わりない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。