ウイグル騒乱が暴いた「民族政策」の大矛盾

執筆者:藤田洋毅2009年9月号

新疆ウイグル自治区での騒乱は、中国のさらなるほころびを露呈させた。この二十年間、こじれるばかりの少数民族問題を検証する。「二十年前と同じく激烈な闘いでした。民族政策の失敗は明々白々。わが党は、本当に過去から学ばなくなった。深刻に反省すべきです」 中国・新疆ウイグル自治区政府の関係者は言った。胡錦濤総書記が執政目標に掲げる「和諧(調和)社会建設は掛け声ばかり。実態がなく、今や風前の灯だ」と苛立ちを隠さない。中国当局は七月五日に始まった騒乱を「内外の敵対勢力が結託、綿密に組織し画策した重大な暴力犯罪事件」だとし、宗教とは無関係であり、世界で最も成功し長期に堅持してきた民族政策や民族大団結の大局は揺るがないと声高に訴える。同時に、在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席を「事件を計画し煽動した黒幕」と徹底批判する宣伝攻勢を続けている。だが足元の党・政府内部からも、失策を棚上げし事件が起きるたびに場当たり的な「鉄腕」手法を繰り返す、強引で稚拙な対応にメスを入れる時だとの声が湧き起こっているのだ。 七月五日、区都ウルムチを舞台にウイグル族と漢族が入り乱れた騒乱による死者は百九十七人、重軽傷者千七百人超に及び、身柄拘束・逮捕者は二千人余(八月十日時点)に上るという。

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