夏休みにもかかわらず、バリ島やジャカルタへの外国人観光客数が急減している。インドネシア政府は日本や韓国、豪州などで緊急観光キャンペーンを展開しているが、七月十七日にジャカルタ市内の米系高級ホテル二軒が爆破されたことで、観光客の足が遠のいているのだ。金曜日の朝食時間帯を狙った今回のテロにより、九人が死亡し、重軽傷者は五十人を超えた。 インドネシアでは二〇〇二年から〇五年にかけて毎年、爆弾テロが起こされた。だが、今回は特定の施設や人物をピンポイントでターゲットにしており、これまでと根本的に異なる。 狙われた二軒のホテルは、隣り合わせで聳えるJ. W. マリオットとリッツ・カールトン。マリオットは〇三年の爆弾テロ事件でも甚大な被害を受けた。とりわけ注目されるのは、自爆テロ犯の行動だ。二日前からマリオットに宿泊し、部屋で爆弾を組み立てた犯人は、エレベーターで移動。地元のインドネシア人でごった返すメイン・ダイニング・レストランには見向きもせず、反対方向に向かい、米系投資顧問会社「キャッスルアジア」が外資系ビジネスマンを集めて毎週金曜日に開催している朝食会の会場入口で自爆テロに及んだのである。 朝食会の主催者は、インドネシアで鉱物・エネルギー開発を手掛けてきた米国人ジェームズ・キャッスル氏。ジャカルタを拠点に三十年以上にわたって開発を手掛けてきたキャッスル氏は、政財界に屈指の人脈をもち、インドネシア経済を陰で操っているといわれる。ちなみに夫人は日本人だ。

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