世界の小麦を脅かすUg99の不気味な浸透

執筆者:デール・ヒルデブラント2009年9月号

国連食糧農業機関も警告を発する小麦の病害がイランで確認された。アジアに感染が拡大する恐れはあるのか――。[ノースダコタ州バレーシティ発]感染力の強い新たな小麦の病害、黒サビ病「Ug99」が見つかってからというもの、感染が広がれば世界の小麦の収穫は八〇%も減少し、大変な事態が起きるといった不安が世界を駆けめぐった。 実際、国連食糧農業機関(FAO)も昨年、適切な措置が取られなければ、Ug99によって、世界の年間小麦生産総量六億四千万トンの一割近くに相当する六千万トンが失われかねないと警告を発した。 FAOの報告書は、もし十分な対策が取られず、こうした事態が現実のものとなれば、食糧価格は高騰し、世界の飢餓人口がまた増加するであろうとも述べた。なぜ小麦生産が減ると食糧全体の価格が高騰するかといえば、カロリーベースで見ると世界の食糧消費の二〇%以上が小麦の消費によるものだからだ。 一方で専門家は、対応策はきちんとあり、パニックになる必要はないと語る。Ug99対策の二つの手立ては、感染拡大を防ぐ殺菌剤の散布と、品質改良によるUg99に耐性のある小麦の開発である。高湿度のアジアへの接近 新たな小麦黒サビ病がアフリカのウガンダで発見されたのは、一九九九年のことだった。ウガンダと九九年からUg99の名がつけられた。Ug99は、小麦、オート麦、大麦など穀類の維管束組織(茎を縦に走る柱状組織の集まり)を塞いでしまう黒サビ病だ。赤サビ病や黄サビ病が穀物の実りを「悪く」する程度なのに対し、Ug99に感染した小麦や大麦は最悪の場合、まったく実をつけない。そして、世界の小麦のうち七割から八割の品種がUg99にかかりやすいと見られている。

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