経済は五%も収縮したのに、失業率は三%台。世界経済危機の中で、欧州のオランダが驚異的なパフォーマンスで注目されている。 その秘密は、就労人口の四七%を占めるパート労働力にある。パートといっても、給与水準や年金、休暇などの待遇と法的権利は常勤労働者とほとんど同じ。政府、企業、労働組合の三者が一体となり、約二十年がかりで作り上げた「オランダ・モデル」の強さが不況期のワークシェアリングに発揮された。 日米欧各国が財政出動に走る中、バルケネンデ政権のモットーは「時短で仕事を分け合おう」といたって地味。ドネル雇用相は今年六月、ジュネーブでの国際雇用会議で、「完全にクビになるより、就労時間を半減しても、働き口を確保する方がいいはずだ」と訴えた。 政府が四月に始めた緊急対策は、経営が悪化した企業に、パートの就労時間を五〇%まで削減することを認める代わりに、解雇はさせないという内容。時短で減った給与は、政府が失業手当(削減分給与の七〇%)で補填する。労働者の手取りは単純計算で一五%減るが、職は確保できる。利用企業は解雇すれば「罰金」を科されるが、迅速な人件費削減が可能。政府は完全失業が回避できる。政労使「痛み分け」の制度である。

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