中国の対台湾投資「通信」「金融」で足踏み

執筆者:八ツ井琢磨2009年9月号

 中国企業の対台湾投資を認めることで一致した四月末の中台窓口機関トップ会談から三カ月余り。台湾側は六月末に関連規定を公布し、投資受け入れを正式にスタートさせた。解禁対象はパソコンなどの製造業やサービス業、公共投資の計百分野。これまで投資資金が台湾から中国本土へ一方的に流れていた中台経済関係は大きな転機を迎えた。 しかし、実際には中台資本提携の有望分野とみられているものの投資解禁が見送られた例も少なくない。代表例が通信業。付加価値サービスなどの第二種通信業は開放されたが、第一種通信業に分類される通信ネットワーク設備の運営業者は投資解禁の対象から外された。 既に四月末には中国携帯電話サービス最大手の中国移動と台湾遠伝電信が資本提携を発表。中国移動は遠伝が発行する百七十八億台湾ドル(約五百二十億円)相当の新株を引き受け、一二%出資する予定だった。実現すれば、現在遠伝に資本参加しているNTTドコモ(持ち株比率四・七%)を上回る株主となるはずだったが、第一種通信業の開放が見送られたため、計画は暗礁に乗り上げている。 遠伝によれば、同社は台湾携帯電話業界でシェア二四%と中華電信(三五%)、台湾大哥大(二五%)に次ぐ三位に付けているが、地元市場は頭打ち。このため中国本土での事業開拓を目指しており、中国移動との資本提携は何としても実現したいところ。遠伝の徐旭東董事長(会長)は八月末にも台湾を訪れる王建宙中国移動董事長と共に関係当局を訪問し、事態の打開を図る方針とされる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。