憂いの国連トップ「潘基文」評価低迷の理由

執筆者:北井邦亮2009年9月号

五年の任期は後半に入った。だが、功績を強調する本人に浴びせられるのは口さがない批判。なぜ、酷評されるのか。[ニューヨーク発]「終わりの始まり。再選は無理だ」。国連トップの潘基文事務総長がミャンマーから出国した七月初旬、ある国連幹部はそう吐き捨てた。 潘氏は六月末で五年の任期を折り返したばかりだが、その中間評価は決して芳しいものではない。軍事政権が民主化勢力の弾圧を続けるミャンマーを訪れながら、刑務所に移送された民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんと面会すらできなかったことで、評価は一段と下がった。先の国連幹部は、潘体制の「レームダック化」が進み、再選が当たり前の事務総長職から一期目終了と同時に退任せざるを得なくなるだろうと予測していた。 潘氏は五月のスリランカ訪問でも、内戦の勝利を誇る同国政府の宣伝に利用されたと非難を受けた。難民キャンプへの部外者立ち入りをかたくなに拒んできたスリランカ政府は、避難民に対する人道支援の必要を強調する潘氏を最初の「客人」として迎え入れたからだ。人権団体などは、事態が終息してから行動したのでは「遅すぎる」と糾弾した。 潘氏の一連の外遊は、いずれも火中の栗を拾う旅だった。特にミャンマー行きについては、国連政治局が、現状では大きな成果を見込めないため「控えるべきだ」と勧告していたという。にもかかわらず、潘氏は「悩みに悩んだ末」(国連当局者)訪問を決めた。一体なぜか。

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