ヤラー、パッタニー、ナラティワートのタイ南部三県で爆弾テロが激化。対抗手段として、一般市民が武装する事態が起きている。 八月二十五日にナラティワート県で自動車に仕掛けられた爆弾が爆発、四十人以上が負傷する事件に続き、九月三日にはパッタニー県でオートバイが爆発するなど連続爆破で三十人以上が死傷した。いずれも南部で反政府運動を続けるイスラム系テロ組織による犯行とみられている。 タイ南部では二〇〇四年以来、爆弾テロや銃撃戦で三千五百人以上が犠牲となったが、タイ治安当局のテロ対策は不十分で犯行組織の特定すらできていない。だが、タイ情報当局によると、テロ組織は地元イスラム学校で若いイスラム教徒を選抜し、特別教育で洗脳してテロ実行犯に仕立てているもようだという。 タイのテロの特徴は、自爆テロがほとんどなく、自動車やバイク、道ばたなどに爆弾を仕掛けるケースが多いこと。警察やモスク(イスラム教寺院)への銃撃も多い。モスクが標的にされることについて、警察は「『聖戦としてのテロ』に反対する同胞へのみせしめ」と見るが、こうした治安の悪化に、南部三県では一般市民が拳銃などを携行するケースが急増している。 タイ政府は「市民の武装では問題は解決しない」と呼びかけるが、現地では「警察も軍も守ってくれない以上、自分で身を守るしかない」との空気が支配的だという。

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