八月初めにパキスタンのイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の指導者が死亡したとのニュースは瞬く間に世界中を駆け巡った。最高司令官のベイトラ・メスードは、部族地域の南ワジリスタンにある第二夫人の実家を訪れていた八月五日に、米軍の無人機による爆撃を受け死亡したとされる。 パキスタン政府は、すぐにメスード司令官の死亡を確言した。以前にも死亡情報が流れたことはあったが、今回は「たまたまメスードの代表団が首都イスラマバードを陳情に訪れていて、彼の死亡の裏付けがとれた」(政府筋)のだという。 当初、TTP幹部でメスードの側近だったハキムラ・メスードとワリウル・レーマンは死亡のニュースを否定していた。が、二十五日になってハキムラはレーマンと共にメディアの取材に応じ、メスードの死を認めた上で、自身が新司令官に選出されたことを発表。 しかしパキスタン政府は、後継者を決める話し合いの最中に、後継候補だったハキムラとレーマンの間で銃撃戦が発生し、ハキムラが死亡した可能性を示唆する。前出の政府筋は、「今メディアに登場しているのはアフガニスタンにいた彼の兄弟だとみている」という。 TTPは今後、「組織力を改めて証明するために大規模テロを起こす可能性が高い」(地元記者)。すでに自爆テロを実行するためにテロリスト五十人をイスラマバードなどに送り込んだといわれる。政府とTTPの戦いはまだまだ終わりそうにない。

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